フッ素(フッ化物)という言葉を一度耳にした事がある方も多いと思います。最近の歯磨き粉には含まれているものも多くあります。フッ素(フッ化物)は、商品のパッケージには「フッ化リン酸ナトリウム」や「フッ化ナトリウム」などと表記されています。
今回は、このフッ素(フッ化物)の効果や役割についてご紹介します。
目次
フッ素(フッ化物)って何?
フッ素とは自然界にある元素名で、単体では気体の猛毒です。フッ素はとても強い酸化作用があり基本的に単体では、ほとんど存在できません。そのためフッ素は他の物質と結びついて「フッ化物」として存在しています。この「フッ化物」こそが私たちが歯医者さんや歯磨き粉で使っている「フッ素」のことです。
実は私たちが「フッ素」と呼んでいるものは「フッ化物」のことで、自然界では、あらゆるところに存在する安全な物質です。
フッ素(フッ化物)は私たちの身近な食品にも含まれています
フッ素(フッ化物)はワカメ、エビ、イワシなどの海産物に多く含まれています。例えば、海水中には約1.3ppm、魚介類や海草には2~10ppmのフッ素(フッ化物)が含まれています。フッ素(フッ化物)は私たちの身近なところに存在していて、海産物以外にも野菜や牛肉、ビールなどにも含まれています。普段の食生活で気づかないうちに摂取しています。
2017年に世界基準である1500ppm濃度まで認可された
2017年までは、フッ素(フッ化物)濃度は大人で1000ppmが上限でしたが、上限が引き上げられて世界基準である1500ppmのフッ素(フッ化物)を配合する歯磨き粉が日本でも認可されました。そのため、セルフケアでもより濃度の高いフッ素(フッ化物)を取り入れやすくなりました。
WHOテクニカルレポートによると1000ppm以上のフッ素(フッ化物)濃度では、濃度が500ppm高くなるごとに、6%の虫歯予防効果の上昇がみられるといわれています。
フッ素(フッ化物)の3つの作用
①酸に負けないために歯質強化
歯の表面を構成するハイドロキシアパタイトから歯を溶かす酸に強いフルオロアパタイトを作りエナメル質を硬く丈夫にしてくれます。そして、歯のエナメル質結晶の弱い箇所を修復し、より強固な結晶を作ります。
②虫歯菌のはたらきを抑制
虫歯菌の酵素のはたらきを抑制して、歯を溶かす酸を作らないようにします。また、虫歯菌の栄養となる糖の取り込みを邪魔して、菌が歯にくっつき易くする粘度の高い物質を作るのを抑えます。
③歯の再石灰化
フッ素(フッ化物)は唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンとともに歯に再沈着し、脱灰部分の再石灰化を促進します。フッ素(フッ化物)は唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンと共に虫歯菌の出す酸で溶けかかった歯(脱灰)の表面に沈着し、修復します。
歯磨き粉や歯科医院で使われるフッ素は安全性の高いフッ素(フッ化物)
フッ素は単体では気体の猛毒ですが、歯医者さんのフッ素(フッ化物)塗布や歯磨き粉に使われているものは毒性はなく安全性の高いフッ素(フッ化物)です。
虫歯予防に有効なフッ素(フッ化物)ですが、多く摂取しすぎると中毒を起こすこともあります。健康に良いとされている食べ物でも、食べすぎてしまうと体によくありません。フッ素(フッ化物)も同じように、虫歯予防に効果的だからといって多く使えばいいというわけではありません。
急性フッ素中毒の目安
急性フッ素中毒とは、フッ素を大量に摂取したときに起こる症状です。腹痛や嘔吐、下痢、進行すると痙攣などを起こします。例えば、体重6.8kgのお子さまが950ppm/F、40g歯磨き粉のチューブを一気飲みすると急性フッ素中毒が起こり得ます。このように大量に摂取した時に起こりやすいものなので、普段使う量であれば全く問題ありません。
市販品の規定最大量は成人用で1500ppm(小児用で950ppm)
厚生労働省による規定の最大量は市販歯磨き剤が小児用で950ppm、大人用で1500ppmまでと決められています。用法と用量を守り正しく使えば、虫歯予防の効果を発揮してくれるアイテムなので、ぜひ取り入れていきましょう。
フッ素塗布は歯が生え始めたら始めましょう
乳歯が生え始めたらすぐに歯医者さんでのフッ素(フッ化物)塗布を受けることをおすすめします。生え始めの歯はフッ素(フッ化物)塗布による歯の表層へのフッ素(フッ化物)の取り込み量が大きいからです。乳歯は永久歯よりエナメル質が薄く、溝が深いために簡単に虫歯になってしまいます。
永久歯の生え始め2~3年のあいだも要注意!
永久歯も、生え始めてから2~3年のあいだ虫歯になりやすい状態です。この期間は、特に定期的なフッ素(フッ化物)塗布が有効だと言えます。1歳頃から全ての歯が生え終わる13歳頃までの間、少なくとも6ヶ月ごとに塗布していくことが効果的です。
妊娠中の方・授乳中の方のフッ素(フッ化物)使用での影響はありません
血液・胎盤を通ってフッ素(フッ化物)が胎児や母乳に影響を与えるという報告はありません。つまり、妊娠中フッ素(フッ化物)入り歯磨き剤を使ったから出生後の乳歯に悪影響もない代わりに、乳歯が虫歯になりにくいということもありません。母親の虫歯菌が多いと子供へ感染する可能性が高くなるため、健康なお口や歯の状態を維持する努力が必要です。
歯科医院のフッ素(フッ化物)と市販品との違い
虫歯予防のためのフッ素(フッ化物)は「歯医者さんで塗るものと、家庭用のものと、どっちも同じ?」その答えは「いいえ」です。
歯科医院は、高濃度(9000ppm程度)
フッ素(フッ化物)塗布の効果は、約3か月持続する
フッ素(フッ化物)塗布の効果は、濃度が高い分約3か月持続すると言われていますので、その期間内に定期的に受けることをおすすめします。定期的に受けることで虫歯予防効果が高まります。
塗布した30分は飲食しないこと
高濃度のフッ素(フッ化物)を歯に直接塗布するため、処置をする前には歯磨きをして歯の表面の汚れをとっておきましょう。成分を十分に行き渡らせるためにも、塗布した後は30分は飲んだり、食べたりしないようにしてください。
セルフケアで使う市販品は低濃度(1000ppm程度)
厚生労働省による規定の最大量は市販歯磨き剤が小児用で950ppmまでとなっています。(15歳以上~大人は1500ppm)毎日使えるように歯科医院などで塗布するものと比べて、フッ素濃度は低いため歯科医院での定期的な塗布と併用して使われるのをおすすめします。
オススメのフッ素(フッ化物)配合の歯磨き粉
歯磨き剤にもフッ素(フッ化物)入りの商品が多く出ています。「チェックアップ」は一般的な歯磨き粉などのオーラルケア用品の中では高濃度で、フッ素効果の高い商品です。
次回の記事では、オススメのフッ素入り歯磨き粉「チェックアップ」について詳しくご紹介するので楽しみにしていてください(^ ^)
フッ素は虫歯を治すものではなく予防するもの
あくまでもフッ素(フッ化物)は予防するもので虫歯を治すものではありません。定期的なフッ素(フッ化物)塗布により虫歯を予防することで、歯を長く残せる可能性が高まります。健康な歯に使うと効果をより発揮するので、歯が健康な状態の時に積極的に取り入れていきましょう。
フッ素(フッ化物)は歯科医院とセルフケアの併用がベスト
歯科医院でのフッ素(フッ化物)塗布は、資質や歯の表面の改善効果が3ヶ月に1度くらい続くと言われています。歯医者さんでフッ素(フッ化物)を塗って歯に蓄え、お家では毎日少しずつフッ素(フッ化物)入りの歯磨きを補ってあげることで、虫歯予防の相乗効果が期待できます。
まとめ
フッ素(フッ化物)は、正しい使い方をすれば虫歯予防効果を発揮してくれる成分です。虫歯を予防するためにも、やはりフッ素(フッ化物)は使うべきだと思います。しかし、日頃のお口の中の環境が良い状態でないと、歯医者さんでいくらフッ素(フッ化物)を塗っても効果は薄れてしまいます。フッ素(フッ化物)の効果を最大限発揮させるためには、毎日のセルフケアが重要です。
セルフケアでフッ素(フッ化物)配合の歯磨きや洗口液を毎日コツコツ続けて、歯科医院で行う高濃度のフッ素(フッ化物)塗布は、3ヶ月に1回行うことで虫歯予防の相乗効果を期待できます。
しかし、フッ素(フッ化物)はあくまでも虫歯の予防効果があるもので、虫歯を治すものではありません。フッ素(フッ化物)を使っているから安心するのではなく「毎日きちんと歯磨きをする事」が何よりも大事です。
記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁