みなさんは、歯科医院で歯型取りをしたことはありますか?一般的な歯型取りは、お口いっぱいにドロっとした粘土の様なものを入れるので、苦手な方も多いのではないでしょうか。
しかし、歯科業界も技術革新が進み、医療機器のデジタル化がどんどん進んでいます。歯型取りもその一つです。
そこで今回は、新しいデジタルな歯型取りである「光学印象」についてお話しします。今まで歯形取りに苦手意識を持つ方には、おすすめの方法です。ぜひチェックしてみてください。
目次
印象材による歯型取り
歯型を取ることを歯科では、印象(いんしょう)と言います。歯の型を取るときに使う材料を「印象材」といい、印象材の種類は大きく分けて「アルジネート」と「シリコーンゴム」の2種類があります。アルジネート印象はその経済性、取り扱いの容易さから、歯科治療でいちばん多く使われています。シリコーンゴムは材料が高価ですが、より精密な型が取れるのでセラミックなどの保険適用外の場合はシリコーンを使った歯の型取りを行うことがあります。
現在の歯型取りは、歯型を印象材で型を取り、そこに石膏を流し固めて、歯型を作る方法が一般的です。
印象材による歯型取りは苦手な方も多い
印象材による歯型取りは、嘔吐反射(口に異物が入った際に「オエッ」となる生理的反応)が強い場合、歯型が固まるまで口に入れたまま待っていなくてはいけないため、大変辛い作業になっています。また、型取りした模型が現物のみとなるので、破損や紛失のリスクがあることや、万が一型取りを失敗してしまうと、再度一から型取りが必要になるため、時間や手間もかかってしまいます。印象材による歯型取りは、患者さまにとっても負担が大きく苦手な方も多いです。
新しいデジタルな歯形取り【光学印象】
光学印象とは、レーザーなどの光により お口の中で直接、歯の位置や噛み合わせ、歯の色を計測する歯型取りの方法です。 モニタを見ながら患者さんと 現状のお口の状態をその場で確認することができます。高精度なデジタルデータを得ることができるため、治療クオリティも向上します。
光学印象の特徴
◆誤差が少ない精密な歯形取り
光学印象による歯型取りは、歯の細部まで確実に精密に形を再現することができます。その場で歯型の3Dデータが作成され、モニター(画面)上で確認できます。手間が掛からない上、ワンステップで出来るので、データの劣化なく型取りが出来ます。
◆嘔吐反射の心配がない
印象材による歯型取りは、粘土のようなものをノドの奥の方まで入れるので、どうしてもオエっという嘔吐反射が出てしまう方もいます。しかし光学印象は、歯に光を当てるだけでスキャンが完了し、不快な思いをすることなく歯型をとることが可能です。口を大きく開け続けなくて済み、途中で休むことも出来ます。
◆短時間で効率的に治療が可能
カメラで撮影をして型取りをしていくので、リアルタイムで型取りの確認ができます。約1分でスキャンができるため、短時間で歯型を採得することができます。その場ですぐ確認もできるデジタルデータなので、模型の作り直しが必要になるなどの再度来院していただくようなトラブルが起きる心配もありません。またスキャンデータはインターネットで送信可能なため、従来よりも治療の開始を早められるメリットもあります。
◆安心・安全に採得できる
従来のように印象材がのどに流れ込んでしまうというトラブルがなく、放射線を使用していないため、身体への悪影響も心配ありません。お子さまから歯の動揺がある方も利用することができます。また、ペン型スキャナーの先端は取り外し式で患者さまごとに交換しているため、衛生面も安心です。
光学印象は様々な治療に活用されています
補綴(ほてつ)治療
歯が欠けたり、なくなった場合にクラウンや入れ歯などの人工物で補うことを補綴(ほてつ)といいます。修復物の作製が必要な補綴治療をする際、歯や歯ぐきのデータをスキャンし、つめ物やかぶせ物、入れ歯、ブリッジ、インプラントの上部構造などを、スキャンデータをもとにして作製することがあります。
インプラント治療
インプラント治療では、術前にCTや光学印象で採取したデータをもとに、3Dのモデルを作成し、より安全性の高い診断と治療を行うケースが多くあります。光学印象で取得した口腔内のデータを3Dで表示し、PCに取り込めるため、インプラント治療において重要な術前の診断、専用ソフトによるシミュレーション、サージカルガイド(インプラントを正確に埋め込むためのガイド)の作製などにも役立ちます。
歯列矯正治療
歯列矯正治療では、歯並びやかみ合わせをスキャンすることで、診断や治療計画の立案に役立つことがあります。また、スキャンしたデータから3Dモデルを作成し、治療前と治療後のシミュレーションを確認したり、スキャンした歯型から歯に装着する矯正装置を作製したりすることも可能です。
インレー(つめ物)の光学印象が保険適用に!
光学印象は、患者さまにとってメリットも多く大変便利なものですが、保険適用外のため自由診療で行っています。そのため、どうしても選択肢の一つとして選びづらい面がありました。しかし、2024年6月にインレー(つめ物)の光学印象が保険適用になるため、今後は光学印象での歯型取りが身近になります。これにより、さらに精度の高い、患者さまにとって快適な歯科治療を提供することが可能になります。これまでの歯型取りが苦手な方にとっても、歯科医院での治療の負担軽減につながると期待しています。
まとめ
歯型取りは、虫歯治療、入れ歯、矯正治療、インプラントなど、様々な場面で歯の型取り(印象)が必要になります。印象材による歯型取りが苦手な方も、「光学印象」であれば負担がなくスムーズに正確に歯型を取ることが可能です。
歯科業界でのデジタル化はこのところ大きく進歩しています。今後も最新の機器を活用し、患者さまにより良く、より快適な診療ができるよう努めて参ります。「光学印象」について気になる事があれば、いつでもお気軽にお問い合わせください。
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記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁