歯周病のリスクファクター-喫煙編-

歯周病はギネスブックに世界で一番かかっている人が多い病気として登録されており、日本でも約8割が感染している国民病です。また、歯周病はかかってしまうと再発しやすい特徴があります。

歯周病になる原因としては、様々なことが要因としてあげられていますが、今回は、そのうちの一つの「喫煙」についてご紹介します。

歯周病について、詳しくはこちらをご覧ください。

喫煙と歯周病の関係

歯周病にとって「喫煙」のリスクは、非常に大きく危険因子(リスクファクター)である事は間違いありません。タバコを吸う人は吸わない人に比べて、歯周病になりやすく、進行速度も速くなります。なおかつ、治療しても治りにくいこともわかっています。

その原因は、タバコに含まれる有害物質が影響しています。

タバコに含まれる三大有害物質

ニコチン

ニコチンは、血管を収縮させ血液の流れが悪くなり、血圧上昇や心拍数増加など、心臓に負担をかける原因となります。ニコチンは、皮膚からも体内に吸収されるため、タバコを吸わない人にも影響が及びます。

一酸化炭素

一酸化炭素は血液中のヘモグロビンと結合しやすいので血液に十分な酸素を運ぶことができなくなって、全身の細胞を酸欠状態にしてしまいます。息苦しさ、めまい、頭痛、吐き気などを引き起こす原因になります。

タール

タールはタバコの葉が燃える際に発生する黒褐色液体で、歯の表面に「ヤニ」として沈着します。タールは粘質性が高く、60種類以上の発がん性物質が含まれ、がんの原因にもなります。

喫煙が歯周病に及ぼす悪影響

タバコには、先ほどご紹介した三大有害物質(ニコチン、タール、一酸化炭素)をはじめ約200種類もの有害物質が含まれています。その中で発がん物質が約70種類と言われていています。これらの有害物質は、身体だけでなく歯周病にも悪影響を及ぼします。

1.歯周病の進行に気づきにくい

タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させて歯肉の血行不良を引き起こします。歯ぐきが炎症を起こしても出血が抑えられ、歯周病の症状である出血が隠されてしまうため、歯周病に気づくことが難しくなります。また、タールによってプラークや歯石が付きやすいことで、歯周病が進行しやすくなってしまいます。

2.歯周病が重症化しやすい

タバコに含まれる一酸化炭素が、血中のヘモグロビンと結合し、酸素の供給能力を低下させ、歯周組織の酸素不足を引き起こします。そのため、歯周組織は栄養不足になり、歯周病細菌に対する抵抗力が低下し歯周病を重症化させます。

3.歯周病治療の効果を低下させる

ニコチンは、組織を再生・治癒させる機能も低下させます。喫煙すると歯肉の血管収縮、そして酸素飽和度の低下が起こり歯肉は貧血状態になるため、歯肉の創傷治癒の低下(傷が治りにくい状態)が起こります。手術を行ったとしても効果の現われ方が非喫煙者よりも低くなってしまいます。

喫煙本数が多いほど歯周病になりやすい

喫煙者は非喫煙者に比べて2-6倍、歯周病になりやすいと報告されています。しかも、1日の喫煙の本数が増えれば歯周病のリスクも増加します。1日に31本以上タバコを吸う人は吸わない人の約6倍も歯周病にかかりやすいです。

受動喫煙でも歯周病リスクは最大3.6倍高まる

タバコによる歯周組織への影響は、吸っている本人だけでなく周囲の人にまで及びます。受動喫煙による歯周病リスクは、受動喫煙の環境にない非喫煙者の3.6倍にも及ぶという報告もあります。さらに、親がタバコを吸っている場合、子供の歯周病や歯肉のメラニン色素沈着のリスクが高まることが分かっています。

また、近くでタバコを吸っていなくても、喫煙した空間には有害物質が残っていて、間接的に健康被害を受けてしまいます。家族に喫煙者がいる場合は、できるだけ喫煙スペースには近寄らず、分煙して生活する事をおすすめします。

歯周病を予防するために・・・

禁煙

禁煙すると歯ぐきの状態が回復し、免疫や細胞のはたらきが高まるため、歯周病のリスクが低下し、治療効果が上がることが明らかになっています。禁煙することによって歯周組織は、数週間で本来備わっていた免疫応答を回復するようになり、歯周治療によって 1 年後には歯ぐきは本来の健康な状態に回復します。

喫煙は、本人だけでなく周りの方にも悪影響を及ぼします。喫煙されている方は、この機会にぜひ禁煙にチャレンジしましょう!

定期検診(メンテナンス)

歯周病は初期の場合、自覚症状がなく気づきにくいと言われています。喫煙している場合は、自覚症状がさらに出づらく進行しやすいです。気になる症状がないからといって自己判断をせず、歯科定期検診を受けましょう。

定期検診については以前に「多賀歯科の定期検診って何をしてるの?」にてご紹介しているので、よろしければこちらもご覧ください(^ ^)

まとめ

喫煙は間違いなく歯周病の危険因子(リスクファクター)で、喫煙本数が多いほどリスクも高まります。さらに、喫煙している場合は、自覚症状に気づかないまま歯周病が進行しやすく、治療しても非喫煙者に比べて治療の効果が低い事もわかっています。喫煙されている方は、自覚症状の有無に関わらず、歯医者さんで一度検診を受けましょう。

もし、現在喫煙している場合でも、禁煙をする事で、歯周病のリスクが低下し、治療効果が上がることが明らかになっています。歯周病予防はもちろん、全身の健康のためにも、ぜひ禁煙しましょう。禁煙する事で、タバコの悪影響から周りの方も守る事ができます。

記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁

SNSでもご購読できます。