体臭があるように、口の中にも匂いがあります。病気やその他の原因で周囲に不快感を抱かせるような口の臭いのことを口臭と称します。不快な口臭のほとんどは、剥がれおちた粘膜のカスや唾液、食物のカスなどに含まれるタンパク質が、口の中にいる細菌により分解・発酵される過程で出るガスが原因成分です。主な原因物質は、メチルメルカプタン、硫化水素、ジメチルサルファイド(硫化メチル)などの揮発性の硫黄化合物です。
【口臭の主な原因物質】
- メチルメルカプタン(玉ねぎが腐ったような臭い)
- 硫化水素(卵が腐ったような臭い)
- ジメチルサルファイド(キャベツが腐ったような臭い)
目次
口臭は大きく分けて5つの種類がある
●生理的口臭
起床直後、空腹時、緊張時は唾液の分泌が減少し、細菌が増殖して口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物が増えてしまいます。これが生理的口臭の原因です。女性の場合、生理時やその前後のホルモンバランスの不調により口臭を感じるときもあります。生理的口臭には日内変動がみられますが、口の中では様々な代謝が行われているので、無臭になることはありません。健康な人でも発生する口臭で、歯みがきや食事をすることにより減少します。
【生理的口臭の特徴】
- 通常の会話距離では分かりにくい
- 常に周囲の人たちを不快にするわけでなく、時々不快にする事がある程度
- 身体のコンディションや生活習慣などによって発生したりしなかったりする
- 病的口臭とは異なり、本人も気がつかない事がある
●飲食物・嗜好品による口臭
ニンニク、ニラ、ネギなどの臭いの強いものを食べたり、アルコールや喫煙によりいったん体内に取り込まれた臭いの元になる成分が胃の中で消化され血液を介して全身に循環し肺を経由して吐き出されることが原因の口臭です。歯を磨いて口をきれいにしても臭うことがありますが、時間の経過とともに臭いも無くなります。
●病的口臭
病気が原因で発生する口臭のことで大きく分けると口腔内のトラブルが原因となる場合と全身の病気が原因となる場合があります。いずれも、病気の症状として発生している口臭のため、改善のためには根本原因である病気を治療する必要があります。病気の種類によって臭いも変わってきます。
※タンパク質の壊疽臭・・・肉の腐ったような臭い
※アセトン臭・・・リンゴの腐ったような甘酸っぱいにおい
●ストレスによる口臭
唾液の分泌は自律神経(交感神経と副交感神経)が調節しています。分泌が促進されるのは、リラックスして副交感神経が優位になっているときです。緊張したりストレスがあるときには交感神経が優位になり副交感神経の働きが低下するので、唾液の分泌が減り、口臭が強くなります。ストレスをかけると、リラックス時に比べて唾液の分泌が約3割減少すると言われています。
●心理的口臭
口臭検査でも口臭が認められない人で、本人だけが口臭があると思い込む口臭のことを指します。自臭症とも言われます。自分の臭いに関して他の人から指摘されたことが、この病気のきっかけとなることも多いようです。ストレスや精神的に不安定な場合や神経質な人、繊細な人や凡帳面な人に多くみられます。
口臭の原因は90%以上が口の中にある
- 歯周病
- 虫歯
- 歯垢・歯石
- 舌苔
- プラスチックの人工歯
- 不良なかぶせ物、被せ物の腐食
- 唾液の減少
口臭は、口の中の原因が全体の90%以上を占めています。その中で一番原因と考えられるのは歯周病で、研究で歯周病と口臭の間には高い相関性があることがわかっています。歯周病の特徴は細菌の温床となる深い歯周ポケットができることです。細菌の中でも嫌気性菌は代謝の過程で硫化水素(卵が腐ったような臭い)やメチルメルカプタン(玉ねぎが腐ったような臭い)を産生し、これが口臭の元となります。さらに歯周病が進行すると歯茎からの出血に膿が混じってくるようになり、口臭もますますひどくなってきます。
口の中にある口臭の原因をチェックしてみよう
- 歯ぐきからよく出血する。
- 歯ぐきがよく腫れる。
- 口の中がネバネバする。
- グラグラした歯がある。
- 歯と歯の間に食べ物がよくはさまる。
- 穴のあいた歯がある。
- 歯の表面を舌でさわるとザラザラしている。
- 口の中に義歯、ブリッジ、かぶせ物が入っている。
- 舌を磨いたことがない。
- 口の中がパサパサしている。
※口腔乾燥症・・・ドライマウスのこと
口腔乾燥症については、「その口の渇き「ドライマウス(口腔乾燥症)」の症状かも!?」という記事でご紹介しています。よろしければこちらもチェックしてみてください^^
口臭予防でできること
歯垢や汚れを取り除く
口臭の原因となる歯磨きの不良。歯磨きは、ただ歯を磨けばよいのではなく、歯垢や汚れをきちんと落とすことが大切です。歯科医院で正しい磨き方の指導を受けて実践したり、音波歯ブラシや電動歯ブラシ、歯間ブラシやデンタルフロスなどを使うのも良いと思います。磨き残しがないか歯垢を染め出してチェックするのもオススメです。
舌苔を取り除く
舌苔も口臭の要因の1つです。粘膜細胞や白血球の血球成分が舌にたまり、細菌によって分解されると悪臭を放ちます。1週間に1回程度、舌を専用ブラシ(タンクリーナー)などでお手入れすると口臭予防に効果的です。汚れを落とそうと強い力をかけると舌が傷ついてしまうので、優しく撫でるように舌苔を落としましょう。
唾液の分泌を増やす
口臭は、朝起きたときやストレスがあるときなど、唾液が減るときに臭いがちです。通常、健康な人で一日1〜1.5リットルの唾液が分泌されていますが、近年唾液が不足するドライマウスが急増しています。唾液が減少すると口臭が強くなるだけでなく食べ物が飲み込みにくくなったり、口の中がネバネバしたり、口が動かしにくくなったりするといったさまざまな症状も出てきます。また、虫歯や歯周病に罹りやすくもなります。 それは、唾液に以下のような役割があるからです。
【唾液の役割】
- 消化作用 アミラーゼ(酵素)がデンプンを分解して体内に吸収しやすくする。
- 溶解作用 食べものと唾液を混ぜ合わせて味を感じる働きを助ける。
- 洗浄作用 歯や舌の表面についた食べ物のかすや、細菌などを洗い流す。
- 円滑作用 お口が滑らかに動き、発音するのが楽にする。
- 抗菌作用 抗菌作用を持つ物質で病原微生物に抵抗する。
- 緩衝作用 酸性に傾いた口の中を中性に戻す。
- 保護作用 お口の中の粘膜を守って、お口の乾燥を防いだり、刺激でお口の中が傷つくのを防ぐ。
このように口臭だけでなくお口の健康を守っている唾液。唾液を出しやすくするには、まずは食事のときによく噛むこと。それ以外にも、普段から水分を多め にとること、よく話すこと、口や舌をよく動かすことで、唾液が出やすくなります。またガムを噛んだり唾液腺マッサージもオススメです。
ストレスを減らす
ストレスが長期にわたって続くと、自立神経が失調し唾液の分泌が抑えられてしまいます。ストレスとうまく付き合いリラックスするには、「笑い」を生活の中に取り入れることで免疫力アップにもつながるようです。また運動もストレス解消に効果的で、軽い運動でもストレスを解消させるホルモンが分泌されるといわれています。日常的に運動を続けることで、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」や「エンドルフィン」が安定的に供給されストレス解消だけでなく疲労回復にも効果を発揮します。
口臭予防に効果的な食べ物・飲みもの
- リンゴのリンゴポリフェノールは、口臭の原因とされるメチルメルカプタンの発生を抑制する。
- キウイに含まれるアクチジニンという成分は、口臭の原因の1つである舌苔を除去してくれる役割がある。
- 純粋ハチミツ(一切加工していない、自然なままのハチミツ)には、口内細菌の増殖を抑えたり、舌苔を除去したりする効果がある。
- レモンには殺菌作用があり、口臭の原因物質を作り出す細菌の数を減らしてくれる。
- ピュアココアに含まれるポリフェノールは、口臭成分を減少させる。(※砂糖を入れると虫歯菌が増加し、かえって口臭が強くなる可能性があるため注意が必要。)
まとめ
自分では気づかないうちに周りの方を不快な気持ちにさせている場合もある口臭。口臭の原因の90%以上は口の中にあると言われており、歯周病と口臭の間には高い相関性があることがわかっています。
病的口臭の中でも全身の病気が原因の場合は、改善のためには根本原因である病気を治療する必要があります。歯周病や虫歯などのお口中に原因がある場合は、歯科医院での治療が必要です。セルフケアをしても口臭がなくならない場合は、一度お口の状態をチェックしてもらいましょう。
口臭予防として歯磨きや舌苔を取り除くことも大切ですが、唾液の分泌を増やすことも大切です。食事のときによく噛むこと、普段から水分を多めにとること、ガムを噛んだり唾液腺マッサージもオススメです。口臭予防に効果的な食べ物や飲み物も紹介していますので、ぜひ普段の生活に取り入れてみてください。
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記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁