歯周病とは、歯と歯茎の境目に溜まった細菌(歯垢や歯石)が原因で、歯の周りに炎症が起こる病気です。
歯周病の初期の症状では、歯茎が赤く腫れたり、歯ブラシやフロスで血が出たりと、歯茎に症状が出始めます。これを歯肉炎といいます。ほとんど痛みや自覚症状が無く、健康だった歯茎も徐々に下がってくるので、毎日鏡を見ていてもなかなか気づかないという怖さがあります。
さらに、歯肉炎が進むと、歯茎はどんどんさがり、歯茎の中にある歯を支えている骨(歯槽骨)を溶かし、歯がグラグラと動くようになり、最終的には歯を失ってしまいます。これを歯周炎(歯槽膿漏)といいます。
このように、歯肉炎→歯周炎→抜歯と進んでいく歯周病ですが、何が原因でどのように進んでいくのか、詳しく見ていきましょう。
目次
1.歯周病を知るには歯の構造から
歯の上の部分を「歯冠」
歯は、歯茎から見えている部分と見えていない部分があります。
歯茎から見えている部分を「歯冠」といい、硬いエナメルが象牙質や歯髄を外側から守っています。
●エナメル質
エナメル質とは、人間の身体組織の中で最も硬い組織で、水晶と同じくらいの硬さがあります。歯に対する様々な外部刺激から歯髄を守っていますが、酸に溶けてしまうという弱点があります。
●象牙質
象牙質とは、エナメル質やセメント質の下の層にある組織です。歯の大部分を構成している、歯の主成分です。エナメル質よりも柔らかい組織であるため、虫歯は象牙質に達した後は、侵食スピードが加速します。また、象牙質に刺激が加わわると痛みを感じます。
●歯髄
歯髄とは、歯の中心部に流れる神経が通っている組織です。歯の痛みを感じるのは主にこの歯髄です。歯髄には痛みを感じるということ以外にも、象牙質の形成や歯への栄養の供給、炎症などの刺激に対する防御反応などの役割があります。また、「歯の神経を抜く」といった場合、これらの組織をすべて取り除くことを指します。これを専門用語で「抜髄」(ばつずい)といいます。
歯の下の部分を「歯根」
「歯冠」より下の歯茎に覆われている部分を「歯根」といいます。
●セメント質
セメント質とは、歯茎の中の象牙質の表面を覆っている組織です。歯根膜と呼ばれる結合組織によって歯槽骨と結合しています。
●歯根膜
歯根膜とは、歯槽骨(歯を支えている骨)とセメント質の間にある薄い膜のことです。歯と歯槽骨を繋ぐという役割のほか、「噛み応え」を感じるという役割や、歯に伝わる咬合力を調整するという役割もあります。噛んで痛みを感じる時には、この部分に炎症があります。
●歯槽骨
歯槽骨とは、歯を支えている骨のことです。通常、歯は簡単に抜けることはありませんが、歯周病が進行すると歯槽骨や歯根膜が破壊されるため歯を支えることが出来なくなり、歯が抜けてしまうことがあります。
●歯肉
歯肉とは、いわゆる「歯ぐき」のことです。歯ぐきは歯槽骨を保護する役割をしています。
2.虫歯になる仕組み
虫歯は歯の上の部分「歯冠」から
虫歯は、歯の見えている部分「歯冠」のエナメル質が、お口の中の菌(虫歯菌の代表が、ミュータンスレンサ球菌)によって
溶かされた状態を言います。
●C0(虫歯の初期)
エナメル質の表面が酸によって白く濁った状態、もしくは溝が茶色になった状態です。 見た目にはほとんどわかりづらいムシ歯の初期状態です。 この程度なら再石灰化が期待できます。
●C1(虫歯の中期)
エナメル質内に細菌が進入して穴が空いた状態です。 ここまで進行すると、もう再石灰化はほとんど期待できません。
●C2(虫歯の後期)
象牙質まで細菌が進入した状態です。虫歯は、象牙質まで達すると侵食スピードを加速させます。冷たい水でしみたり、噛むと痛みを伴います。
●C3(虫歯の後期)
歯髄まで細菌が進入した状態です。 歯髄には痛みを感じる神経が含まれているため、細菌が進入すると炎症を起こし激しい痛みを感じます。
●C3(虫歯の末期)
歯の根だけが残る末期症状。歯髄炎を放置すると、その痛みはある日なくなります。神経が死んで痛みを感じなくなります。さらに放置すると、根の先から歯根膜に炎症が起こり、硬いものを噛んだりすると痛みを感じるようになります。
3.歯周病になる仕組み
歯周病は歯冠より下、歯茎から
歯周病は、歯と歯茎の間(歯肉溝)の汚れにより、歯茎が炎症を起こした状態をいいます。歯の歯根部が細菌に侵されていきます。
●健全
歯周病になっていない歯茎は、引き締まった綺麗なピンク色をしています。
●歯肉炎
歯と歯茎の間の見えない箇所は歯ブラシが届きにくいので汚れが溜まりやすく、そこから細菌による炎症がおきます。この状態を歯肉炎といいます。
●軽度歯周病
歯茎が腫れ歯磨きやフロスで血がでます。しっかり歯磨き出来なくなり汚れが更に溜まってします悪循環が始まり、歯茎が徐々に下がってきます。
●中度歯周病
歯肉が更に腫れ、食べ物もよく詰まるようになります。歯茎が後退し歯が長く見え出し、歯を支え骨(歯槽骨)が溶け出し、歯が抜ける準備が始まります。
●重度歯周病
歯を支える骨(歯槽骨)が溶け歯を支えられずグラグラになります。匂いは鼻を塞ぎたくなる程に…
4.すべてはお口の中の汚れから
虫歯は、“エナメル質”が、歯周病は、“歯茎”が
お口の中の汚れにより侵され、歯の神経や、歯を支える骨までを蝕んでしまうということです。
5.でも、しっかり歯磨きしても…
もちろん歯磨きは大切です。
歯科衛生士さんにしっかり歯磨き指導を受けてのセルフケアは大切です。
しかし、歯磨きだけでは
約60%しか汚れは落とせてない
といわれています。
歯の性質・歯並び・だ液の性質・生活環境・食生活・ご年齢…
しっかり歯磨きをしていても、奥歯などの見えない所や歯が重なっていて届かない所、歯周ポケットの奥深くなど…
気付かないうちに細菌が住処をつくり、いつの間にかムシ歯や歯周病の原因に…
6.食後の食べカスや汚れは…
朝と夜は歯磨きをする方は多いと思いますが、
学校や職場で、お昼ご飯を食べたあとはどうでしょう?
その食べカスや汚れは…
約8時間でプラーク(歯垢)ができる
といわれています。
プラーク(細菌のかたまり)は
歯ブラシが届きにくい、歯と歯の間や
歯と歯ぐきのすき間が大好きです。
昼食後も歯磨きをしていても、
肉眼で見えない隙間などで
プラークは虎視眈々と細菌を蓄積しているのです。
7.お口の中で残ったプラーク(歯垢)は…
歯磨きだけでは落としきれなかったプラークは、
唾液中のカルシウム成分と混ざり石灰化し歯石に変わります。
プラークが歯石に変わる時間は…
約48時間で歯石になる
といわれています。
歯石は、一度出来てしまうと、
歯磨きではなかなか落としきれません。
また、歯石は、デコボコした形状なため、
プラーク(歯垢)が付着しやすく、
歯周病の原因になります。
重要なのは、歯石は歯の見えるところだけじゃなく
目視できない箇所や歯ぐきの中にも
できるということです。
汚れをしっかり落とすには?
鏡で見ただけではわからない歯の汚れ、
歯磨きだけでは取れない歯の汚れがあるので、
歯の健康を維持するには、
国家資格の歯科衛生士さんに
専用の機械でしっかり汚れを
除去してもらうことが大切です。
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定期検診で、ご自身の歯の状態を
丁寧に説明してくれる
歯医者さんにいきましょう
記事監修 Dr.多賀 俊仁
多賀歯科医院
院長 多賀 俊仁